2021年10月1日金曜日

がっつり人間ドラマに浸る秋。クーリエ

こんにちは。
天高く馬肥ゆる秋。
というわけで食べ物もおいしい季節、
馬に限らず人間も食欲が止まらない秋ですね。
先日の健康診断でまんまと去年より3キロ太っていたことが判明し、
しかたなく休肝日を週3日にして不機嫌な私です(?)。
家にいると食べちゃうので、時間があったらなるべく映画を観に行きます( `ー´)ノ
緊急事態宣言が明けたからといって、いきなりあちこち飛び回るのもどうかと思うので、
映画くらいにしておきましょう♪
引き続き、マスク・手洗い・アルコール消毒と体調管理は各自、心掛けていきましょうね。

さてさて秋の大人映画月間、みなさんはもう何かご覧になりましたか?
私は観ました。
「クーリエ:最高機密の運び屋」
© 2020 IRONBARK, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
キューバ危機の裏にあった、衝撃の実話です。
「キューバ危機」
1962年10月16日~28日の、このたった13日間が、
世界が最も核戦争に近付いた時期「キューバ危機」と言われています。
当時、世界は『アメリカ+西側諸国』vs『ソ連+東側諸国』という形ですっかり関係の冷えきった冷戦状態。
日本も当然、アメリカと同盟を組んでいて米軍基地もあるため、
いざ戦争となればアメリカ側という立場。
全くひとごとではありませんでした。
しかし、アメリカソ連は世界で最も力も影響力も大きすぎる大国同士。
直接戦争をするとなると被害が大きくなりすぎて大変。
でも、どっちが世界のトップに立つか、どちらが強いか、世界中の国々にしらしめてやりたい気持ちは常にあったわけで。
なので、直接やりあうのではなく〝バックにつく”という形で当時、あちこちで縄張りやら独立やら対立で内戦をしていた人たちをそれぞれが支援し、力の誇示と競い合いをしていたんですね。
これがいわゆる『米ソの代理戦争』ってやつで、
当時、北と南が対立していた朝鮮戦争ベトナム戦争も、
今でもゴチャゴチャと内戦を続けているアフガン戦争も、
対立するグループのバックにそれぞれアメリカソ連が首を突っ込んで、
武器やらお金やら最後は人員までつぎこんで戦争をさせていたわけです。
自分たちの土地ではやりあわずに、まるでゲームのように遠くから戦争をけしかける。
なんてひどい話!
まあそれでも、すでにお互い核を保有していることを知っているので、実際に直接対決となったら報復に対する報復の繰り返しでほんとに甚大な被害をだしてしまうことも十分理解している国同士。
そうやって外でやいのやいの言ってるうちはまだマシということでしょうか。
そして当時は、南米でもあちこちで独立やクーデターなんかが多発しており、
ものすごく治安の悪い危険な状況にあったのですが、
なかでも有名なキューバ革命
これが今回の映画のテーマ「キューバ危機」に大きく関わってくるわけなんです。
映画やドキュメンタリー番組なんかでもよく取り上げられていますが、
フィデル・カストロチェ・ゲバラが率いる革命軍がキューバの当時の親米・独裁のバチスタ政権を打倒して権力を握り、
アメリカの植民地状態だったキューバが社会主義国へと舵を切ることになった一連の内戦がキューバ革命です。
カストロ政権になったキューバは、アメリカ資本の追放やアメリカ企業の国有化に対抗し、ソ連と接近していきました。
当然、カリブ海の真ん中に位置し天候も良く、産物からの収入も多く見込めるキューバを支配下においておきたかったアメリカは怒り心頭。
キューバへの禁輸措置を行い、経済的に制裁を加えようとしましたが、
キューバはさらに反発してソ連に支援を求め、
それによってソ連がキューバに核ミサイルの配備を始めたというわけなんです。
そうなってくると当然、キューバとは目と鼻の先にあるアメリカですから、
攻撃されることを想定してアメリカ側も戦闘態勢に入るというものものしい状態になってしまった。
でもアメリカソ連の核戦争なんて絶対に阻止しないといけませんよね。
被害なんてもんじゃない、壊滅です。
そこでアメリカが採ったのは「キューバの海域を全面封鎖」という手段。
アメリカ側には、「さっさとキューバを攻撃して封じ込め」という強硬派ももちろんたくさんいたわけなんですが、
その強硬派を説得し、攻撃でもなく、かといって無視でもない「キューバ海域を全面封鎖」というちょうどいい手段で様子を見るという賢い決断をしたのが当時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディだったんですね。
なるほど!
ケネディ大統領といえば、映像にも残っているショッキングな暗殺事件が世界的にも有名すぎて、
いったい何をした人なのかいまいちよくわからない感じじゃないですか?
でも、実はケネディ大統領、このキューバ危機を回避したその手腕が素晴らしいというのでなんなら英雄クラスの人物だったんです。
たしかに、一瞬の判断や一歩やり方を間違えれば世界中を巻き込んで甚大な被害を及ぼしたであろう核戦争になっていたかもしれない状態。
強硬派の説得ができなければキューバの基地への空爆やキューバ本土への侵攻の可能性もあったわけで、そうなると核による報復の繰り返しという最悪の事態になっていたかもしれません。
世界情勢的にもギリギリの状態だったんですね!
しかもこのときケネディ大統領はなんと45歳(;゚Д゚)!!
すごくないですか!?
まだ40代半ばで大国アメリカの大統領になれるんだ!?
なんか、その時点で大国が大国である所以を見せつけられてる気がしますけど(*_*;)
日本が勝てるわけないなあ。。。
そしてこの「核戦争を回避」できたことにより、勢いがついていたケネディ大統領
さあここからアメリカをもっともっと強く大きな国にしていきますよと盛り上がっていた、このキューバ危機の翌年。
1963年、ジョン・F・ケネディは凶弾に倒れました。
享年46歳。
「アメリカ大統領といえば?」なんて質問があったらまず名前が出てくるくらいに有名なこのケネディ大統領、在任期間はなんとたった3年弱( ゚Д゚)
この方がもう少し長生きできていたら。
任期ギリギリまで大統領を続けることができていたら。。。
政治にも歴史にも、たらればなんて無意味なことはわかっていますが、
ついつい考えちゃいますよね。
アメリカ、どうなっていたんでしょうね。
余談ですがそんなアメリカの選挙について、コメディで垣間見ることができる映画が始まりました。
「スイング・ステート」
©2021 Focus Features, LLC. All Rights Reserved
大統領選挙のプロ集団が田舎町で大波乱を巻き起こす!
いまいちわかりにくい、独特なアメリカの選挙の裏側をリアルに、しかもゴリゴリのコメディで描く痛快エンターテインメント。
こちらもよろしく!
・・・ちょっと話がそれましたが、キューバ危機の結末にいきますね。
そんなこんなでアメリカキューバの海域を封鎖することで直接の戦争を避けつつお互い緊張状態のままにらみあっていたアメリカキューバでしたが。
すでにトルコに核ミサイルの基地を持っていていつでもソ連に攻撃できるんだぜとアピールしていたアメリカがトルコの基地を撤去する代わりに、キューバのミサイル基地も撤去して!という交渉が成立し、
晴れて米ソの核戦争が回避できたのです。
これが、〝キューバ危機”
まさに一触即発からの、九死に一生を得る。
アメリカソ連も、別にお互い戦争がしたいわけじゃないんだということがわかり、
このキューバ危機を機に、ホワイトハウス(アメリカ政府)クレムリン(ソ連政府)がホットラインで繋がるようになったのでした。
で。
映画マニア兼世界史マニアによる「映画をがっつり楽しむための世界史ミニ講座」はここまで!
ほんとはもっと複雑で、細かい裏事情があったようですが、
今回は「クーリエ:最高機密の運び屋」をもっと深く楽しむためのミニ講座なので、
ここでは割愛しますね。
ざっくりと大事な部分だけわかりやすく、を重視して書いたので、
個人的な見解や細かい部分の説明不足などあるかもしれませんが、
長い目で見ていただけると助かります(;'∀')

さてそして、その世界的危機ともいえる「キューバ危機」の裏側で、ソ連の機密情報を西側に運んでいたのは、CIAやMI6なんかで徹底的に鍛え上げられた百戦錬磨のプロフェッショナルなスパイ。
ではなく、ごく普通のセールスマンだった!
という実話をもとに作られたのが、この映画。
「クーリエ:最高機密の運び屋」
© 2020 IRONBARK, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
主演は、出ました!ベネ様!
英国が誇る正統派本格俳優ベネディクト・カンバーバッチ
ゴリッゴリに演劇を学び、しかもイングランド王リチャード三世の血を引くまさに貴公子!
中劇で上映した「ホロウ・クラウン嘆きの王冠」ではそのリチャード三世を演じていましたね!
ちなみにこの映画の監督はドミニク・クック
「ホロウ・クラウン嘆きの王冠」の監督を務めた方!
さすが、監督と役者のコンビネーションがバッチリな雰囲気、出てました!
中劇ではベネ様作品はほかにも、ナショナル・シアター・ライブ「シャーロック 忌まわしき花嫁」、など上映してきましたが、
最近では売れっ子になっちゃってマーベルの「ドクターストレンジ」やアカデミー賞に絡むような作品が相次ぎ、中劇にはなかなか顔を見せてくれなくなっていました。
でもこの「クーリエ」と、来月公開の「モーリタニアン」でやっと中劇に戻って来てくれた!
ありがてえ!
仕事してるだけで、ベネ様の声が聴ける!
ベネ様推しの私にとっては幸せな2か月間。
そう、私はベネ様の映画は迷わず観ます。
良い悪い関係なく。
でも今回、「クーリエ」、すごくよかった。地味だけど。
素敵でした!!!地味だけど。
渋い!上手い!地味だけど。
・・・・褒めてます、もちろん。
地味さって、なかなか難しいと思うんですよ。
なんなら派手な雰囲気を出すよりも難しい。
だって、そもそもがお顔もお体もオーラもパーフェクトな英国紳士ですよ。
そんな人が、世界を飛び回るエリートビジネスマンを演じるってんだから、
地味になるはずがない!
・・・・でもちゃんと地味!!(→思いっきり褒めてます)
© 2020 IRONBARK, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
キューバ危機のカギを握る一般人スパイを、彼が演じることによる説得力。
ベネディクト・カンバーバッチという役者は、
特撮のアメコミ作品の主人公を演じても、
舞台を現代におきかえたシャーロック・ホームズを演じても、
哀しきフランケンシュタインを演じても、
そしてキューバ危機の裏で奔走した一般人スパイを演じても、
なぜか妙にリアルな存在感のある人。
今回の「クーリエ:最高機密の運び屋」では、
主人公が真面目でちゃんとした、ほんとに普通の人なんだっていうことがスクリーンを眺めてるだけでわかる。
そして妻と息子と普通に暮らしていたはずのセールスマンがなぜか急にロシアの機密文書を運ぶことになり、戸惑い悩む姿も、
徐々にプレッシャーの大きさに押しつぶされそうになっていく様子も、
その地味さの説得力がゆえに引き立つという、
存在感だけで描き出す素晴らしい伏線!
いやいや引き受けた任務だったにも関わらず、はからずも核戦争を回避するための同志のようになっていた男たちのなんでもない日常から、
命を懸けた葛藤と決断に至るまでを静かに追うストーリー。
「ミッション・インポッシブル」トム・クルーズのようにアクティブでもなく、
「007」ショーン・コネリーあるいはダニエル・クレイグほどジェントルでもなく、
ハラハラドキドキのアクションシーンも無いけれど、
世界の危機のスイッチをいきなり押し付けられた一般人の苦悩する姿や、
実は重要な国家機密を運んでいるのはこんなふうに普通の一般人なのかもと少し怖くなるくらいにリアルなスパイの描き方が興味深い。
とはいえ、国家機密を握る主人公と行動をともにしているかのような緊張感と、
後半は見ているのもつらいくらいにゲッソリと痩せていくベネ様のお姿には、
もうこのあとほんとにどうなっちゃうんだろうというハラハラはずっとありました。
なにしろ、アメリカソ連がお互いに敵対関係にあった時代のお話。
今だってロシアは、実は裏で何をしているのかわからない怖い大国ですが、
当時のソ連はほんとに今の北朝鮮くらい不気味な存在でしたもんね。
ストーリーも決して派手ではないし(もちろん、目立っちゃいけない任務ですからね)、
スパイものの定番であるエンタメ感は皆無ですが、
実話であるという怖さと歴史の裏側の面白さがあいまって、
今までとは違ったスパイものになっていて面白い!
結局、実際にあった話(しかもわりと最近)なので、
結果どうなったのかというのは周知の事実。
なのに観ていてずっとドキドキです。
派手なアクションシーンはないけど、
ヒリヒリするような緊張感のなか、命をかけて核戦争を回避しようとする男たちの姿にシビれます!
もちろん今日、長々と書いたキューバ危機のミニ講座なんて読まなくても楽しめますよ!!
世界史好き兼映画マニアの私が勝手に趣味で書いただけなので、歴史とか苦手な方はスルーしていただいて大丈夫!
男くさい人間ドラマとしてだけでもじゅうぶん面白いので!
テーマはずっしりと重いのですが、複雑に入り組んだお話ではないし、
シンプルに、本線だけを追った作りになっているので難しくないです!
やっぱりキューバ危機をリアルに体験した世代の先輩方がたくさん観に来てくださってるんですけど、
若い人にも観てもらいたいなあ・・・・!
仲良しこよしじゃなくても、口に出さなくても、たった一つの大事なことのために心だけでつながる男たち。
それぞれがそれぞれの事情で、命をかけたギリギリの綱渡りをする緊張感。
全体的にクールに、落ち着いたテイストで描かれていますが、
国を、時代を、世界の運命を託された者たちの熱い人間ドラマです。
秋なので、じっくり、ゆっくり、知的好奇心をくすぐる上質な映画を楽しんでみてください!


さてさて今回もちょっと熱くなりすぎましたかね。
結局、「クーリエ」だけでおなかいっぱいの回になっちゃいました(;'∀')
作品が多すぎて全部をじっくりは厳しいのですが、
重い腰を上げて映画を観に行き、
適当な宣伝ではなくて自分の言葉で映画を紹介していきたいと思いますので、
気が向いたときだけでいいので覗きに来てくださいね!


中劇公式サイト PC→http://www.chugeki.jp/