2020年12月10日木曜日

ベトナムの風に吹かれて。

こんにちは。
いよいよ12月ですね。
毎年毎年、〝あっという間だ”とか〝年末の感じがしない”とか
ブツブツ言ってる私ですが、
まあ~今年に限っては、ほんとに、ガチで、誰もが、思ってるはず。
「ほんとに今年、もう終わりなの?」と。
いろいろありましたよね。
年初からいろいろありすぎて、
でも、そのくせなーんにもない一年。
自粛、ソーシャルディスタンス、密、マスク、アルコール、感染者・・・
この状況下でなければここまで口に出すことのなかったであろう言葉たち。
そして、
外食、飲み会、お祭り、イベント・・・
前は楽しく大きな声で話したり誘ったりできていたのに、
口にするのにちょっと気を遣うようになってしまった言葉たち。
なんだかいつまでたってもこの軽く抑えつけられてる感じが、
どうにも息苦しくて嫌ですね。
来年こそはどうにかもう少し落ち着いて、
ふだんの何気ない息抜きが、
周りの目や空気を気にせずできるようになってほしいなというのが、
ほんとにささやかな私の願いです。

さて、珍しく真面目な話から始まりましたが、
もちろん映画の紹介もしますよ。
今月から来月にかけては「鬼滅の刃」「スタンドバイミー ドラえもん2」「ポケモン」と、ゴリッゴリのアニメ3本を柱に回していくことが決まっています。
「鬼滅の刃」は12月12日(土)から”来場御礼入場者特典第三弾”の配布が決まりましたので、https://kimetsu.com/anime/novelty/
「絶対に欲しい!」という方は早めにお越しくださいね。)
よくご来場いただいている常連さんには、
「子供の映画ばかりで、しばらく観るものがないわね」
なんて言われてしまっている中劇ですが、
映画好きの皆様、ご安心ください。
最近イイ感じの中劇、
冬休みアニメだらけ祭りの前にさりげなくベトナム映画を2本入れてミニシアター系としての面目躍如を狙っています。
「サイゴン・クチュール」
(C) STUDIO68

「ソン・ランの響き」
(C) STUDIO68
この2本、予告からなんとなく私の好きな感じの匂いがしていたので楽しみにしていたんですが。
予想通り、私の大好きな、
〝普通の人々の暮らしが垣間見えるアジア映画”でした!
どちらも、私の大好物である1980~90年代の台湾映画香港映画の空気感漂う、
活気があって人々のエネルギーがほとばしる面白い映画でした!
それこそベトナム戦争によって長いこと経済成長がストップしていたベトナムですが、
現在、ものすごい勢いで経済成長を続けています。
その空気はまさに戦後の日本や、
中国の系統でありながらも毛沢東の影響を受けずに独自の路線で経済成長と文化の発展を進めることができていた1980~90年代の台湾や香港と重なります。
そして中国とは地続きで位置的にも近いベトナムは、
人種も文化も中国ととても近く、
今回の映画のなかでも中国と共通した文化や、
中国の影響を強く受けたと思われる慣習が多いことがわかります。
食に関すること、寺院やお祈りの様子、
経済発展の途上でどうしても格差のできる庶民の暮らしの中に当たり前にじわじわと存在する黒社会の影など、
ホウ・シャオシェンが見つめてきた台湾や、
ウォン・カーウァイが描いてきた香港の姿と見事にシンクロします。
そしてベトナムはフランスの植民地だったので、
土着の文化や慣習にプラスしてフランスの影響を大きく受けているのが、
独特の洗練された雰囲気や情景に強くあらわれていて、
街並みや食文化など、映像だけでもあちこちに強烈な印象を残します。
ベトナムの映画と言えば、「青いパパイヤの香り」を思い浮かべる方も多いと思いますが、
実はあれは、在仏ベトナム人によって全編フランスで撮影された100%フランス映画なのでした。
だから、あんなに綺麗でおしゃれで最先端なモードの香り溢れる作品になっていたんですね。
その監督トラン・アン・ユンはその次の作品「シクロ」では故郷ベトナムへの凱旋を果たし、
やっとベトナムで撮影された(主役は私も大好きな香港の大スター、トニー・レオンでしたけど)のですが、
こちらは思いっきり土埃にまみれたまさに〝ベトナムの今”を切り取った生々しい作品で、
そこにガツンと流れるRADIOHEADなんていうセンスにやられた私でしたが、
とはいえ出資したのはフランスだけなので結局こちらも完全なるフランス映画だったのでした。
もとは大きく中国の影響を受けた土地でありながら、
経済発展途上の混沌としたアジアの魅力と、
植民地としていろいろなものを受け入れてきた柔軟さなど、
台湾香港ベトナムには多くの共通点があるので、
アジア大好きな私としてはやはり映画の世界でもベトナムには強く心惹かれるものがあるのでした。
ベトナムが舞台の作品はほかにもたくさんありますが、
私の苦手な戦争ものは抜きにして、
カトリーヌ・ドヌーブの美魔女ぶりが振り切れてて圧巻の「インドシナ」とか、
エロなのかアートなのかでおおいに世間をザワつかせた「愛人/ラ・マン」とか、
これらはどちらもフランスによる植民地時代のベトナムを切り取った鮮烈な作品でした
残念なのは、ベトナム人によるベトナム映画というものがなかなか本国以外でまだ紹介される機会が少ないこと。
どうしてもアメリカから見たベトナム戦争の話とか、
ベトナムをテーマにしたフランス映画が多くなってしまうのは仕方ない部分ですが、
ベトナムは経済的にも状況的にも今まさにグングン成長中で、
ここ数年は映画業界にも若くて新しい感覚の才能が頭角を現し始め、
少しずつ日本やアジア全体でもベトナム人の作ったベトナム映画が公開されるようになってきたようです。
激動の20世紀アジアにおいても、特に過酷で複雑な歴史を持つベトナムは、
これからさらに成熟して面白くなってきそうな予感がするので、
この機会にぜひ、懐かしくて新しいベトナム新世代の映像を体験してみてください。
まずは12月11日~17日上映の
「サイゴン・クチュール」
(C) STUDIO68
オープニングからもうイイ感じ。
設定は1969年のサイゴン(現在のホー・チミン)。
代々続く民族衣装アオザイの店を営む老舗で、
最先端のファッションに身を包み、若さと才能を謳歌し、
家業や伝統、そして母親を「古い、ダサい」とバカにするいけすかない娘が主人公。
母と娘の容赦ないやり取りは万国共通、
そして時代すらも飛び越えて共感しかない。
ん?待てよ?
このころ、ベトナムは思いっきり戦争中では?
まあ、日本とは比較にならないくらい戦争に振り回された国なので、
そんなものは忘れて楽しいことだけ考えて映画作ったっていいじゃん、
とは思いますが、
そんな時代背景は無視、したわけではなくてちゃんとうっすら浮かんでくる。
そういえば映画にはお父さんが出てこない。。。
そう、戦争に行くのは男たち。
あえて戦地を描いたり、話に出したりしなくても、
その頃を描くのであれば、それは背景として自然にあるもの。
そして、母親や家業に反発する娘の姿は、
当時、世界中を覆っていた「変革」という雰囲気を醸し出す。
反ベトナム!反体制!
そんな時代の空気がやんわりと香ってきます。
そしてそこからの、タイムスリップ!
なんと現代に!
そこで出会ったのはなんと、落ちぶれて自堕落になってしまった未来の自分。
そして廃墟のようになってしまった実家とお店。
今の自分と未来の自分、そして代々続くお店の復活をかけて主人公が立ち上がるー!
というのはもう、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」からの、
「プラダを着た悪魔」
現代のファッション業界にもぐりこんだ主人公の成長をポップで鮮やかに描き出し、
その裏側にある母と娘、そして家族の絆を優しく浮かび上がらせます。
そしてモチーフであるアオザイがまた色鮮やかで美しくて、
目を奪われます。
ベトナムの民族衣装であるアオザイは現在、
学校の制服や特別なお祝いの日などで着る以外にはあまり着られなくなり(日本の着物と同じですね)、
映画の中で言われているように「古い」「ダサイ」と言われるようになってきていたのですが、
この映画の大ヒットにより、斬新なデザインを取り入れた新しいタイプのアオザイを着るのがベトナム国内で大流行し、一躍アオザイブームになったそうです。
そんなムーブメントを引き起こしたこの作品、
みなさん、ピンときましたかね?
そう、プロデューサーから監督、衣装デザインなどなど、
ベトナムを代表する最先端の女性たちで製作された、
まさに女子が作った、現代女子のためのガールズムービーなのです。
(C) STUDIO68
そりゃあそうだよね!
女子のツボつつきまくりのお話でしたもん。
監督はアメリカ、日本、イギリスで映像を学んだイマドキ女子のグエン・ケイ
なんと日本が大好きで、日本の「カワイイ」を目標にしてこの映画を作っています。
そのため映画のあちこちに日本のものが出てくるので、
それを見つけるのも楽しいかも。
笑って、泣いて、自分を探して、本当の母の気持ちを知り、
大きく成長する主人公に共感しかないビタミンムービー。
ストーリーがサクサク進み、全部で1時間半ちょっとなところや、
お金をかけすぎずにストーリーや役者の能力にすべてがかかってるような熱量、
そしてなぜかどこからか伝わってくる、
国や人々の持つエネルギーがハンパなくて、
私の大好きだった1990年代の香港映画と同じ匂いがしました。
大好きな映画「恋する惑星」のようなほとばしる疾走感や圧倒的センスと、
ポップでおしゃれな映像のなかで、
胸熱なストーリーにググッと映画にひきこまれ、
最後は「あーーー楽しかった!」
そんなハッピーな映画です。
公式サイトhttp://saigoncouture.com/

続く11月18日~24日上映
「ソン・ランの響き」
(C) STUDIO68
全体的にセピア色で覆われたような、茶色と緑色が印象的な、美しい映像。
雑然とした、いかにもな発展途上のアジアの下町の様子。
からの、ヨーロッパの植民地であったことからくる不思議な洗練さとおしゃれ感のある街並み。
うーん・・・・私の大好物のやつ!!
そう、ウォン・カーウァイが愛してやまない1960年代の香港を描いた「欲望の翼」「花様年華」の雰囲気をまとった、
陰と陽が絶妙のバランスで背中合わせな感じの、
退廃的でドン詰まりな時代に絶望しながらもあふれるエネルギーに突き動かされているような独特の空気。
一気に南国アジアのその場所、その時代に連れていかれるような感覚が、
心を掴んで離さないのです。
私は「欲望の翼」が大好きで、
夏になると絶対にサントラをヘビロテ、
そしてDVDを引っぱりだしてきて何度も観る、
というのが定番なんですが、
これからはこの映画もローテに入りそう。
ムシムシとした暑い夏の日、
エアコンじゃなくて扇風機の生ぬるい風にあたりながら
瓶ビールを片手に観たい作品。
こちらは1980年代のベトナムが舞台。
演歌とポップスのまざったような音楽、くすんだ色合い、夜中に食べる屋台のフォー、
そして男子の心を通じ合わせるファミコン(もちろんニンテンドー)の音。。。
・・・・・・・いい('∀')!
いいじゃないか!!!
昭和のオバチャン、その感じ、大好物だよ!!
そこはかとなく漂う、香港ノワールの香りも、
モチーフが「さらば、わが愛」と同じ京劇かと思いきやベトナム独自の大衆演劇(カイルオン)だったんですが、それもまたごちゃまぜ感たっぷりで”ザ・アジア”なところも、
ボーイズラブかと思わせておきながら実際はそんなシーンは一切出てこない人間ドラマなところも。
(C) STUDIO68
そしてタイトルの「ソン・ラン」とは、
てっきり主人公が意味ありげに弾きだす弦楽器のことかと思ってたらまさかのカスタネット風打楽器だったところも。
→これ、要チェックです。
て、まるでイジってるみたいですが、そんなことはなく、
マジでよかったので偏見なしでたくさんの映画ヲタクに・・・
いや映画好きのみなさんに観てほしい映画でした。
LGBT作品のように扱われていますが、
正直、全然そんなことはなく、
そう捉えても構わないけど別にそうでなくても全然有りな、
性別も性的嗜好も関係なく、人がとてつもなくシンパシーを感じて仲良くなりたいと思い心と心でつながることができるような人と出会ったときの素敵な、素晴らしい瞬間を切り取った、たった数日間のせつない物語なのですよ。
なんかこの感じ、最近あったなあって思ったら、そう、あれでした。
「ミッドナイト・スワン」
(C) 2020 Midnight Swan Film Partners
あれも、テーマやモチーフはあれど結局は心と心でつながることができる存在に出会うことができた素敵な、素晴らしい時間を描いた作品ですもんね!
くすんだ色合いや下町の雰囲気、退廃的な空気感も似ています。
(まだまだ上映中!)
どちらも素敵な映画。
ほんの少しでも気になった方は、ぜひ観てみてくださいね!

さらにマニアックなお話をもう一つだけ。
このベトナム映画2作品とも、実はプロデューサーは同じ人。
しかも「サイゴン・クチュール」で主人公の母親役を演じてる、
女優さん、ゴ・タイン・バンなんです。(↓左の女性がその方。)
(C) STUDIO68
しかもなんと、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」で大活躍していたアジア人姉妹のお姉ちゃんのほうを演じていたのがこの方なんです。
だからもう、ベトナムを代表する大女優なんですわ!
マジか(゚Д゚)ノ!!!!
そのうえ起業家としても活躍中。
自分でタレント事務所を作ったと思ったら、
あっという間にこれまたベトナムを代表するスーパーアイドルグループ(youtubeの再生回数4億回超え!日本で言えばもう、嵐みたいなもん!)をプロデュースして育てあげちゃった。
そしてそれだけでは終わらず、
ベトナムではものすごく先鋭的な、
質の高い魅力的なコンテンツを発信し続ける映像製作会社も作っちゃった。
で、そこから生み出されたのが、今回上映するこの2作品だったってわけ。
ちなみに今回の「サイゴン・クチュール」の主人公ニュイを助けるイケメンと、
「ソン・ランの響き」のカイルオン役者を演じたイケメンが、
そのベトナムのスーパーアイドルグループのメンバー。
たしかに、映画観てて「なに、このイケメン!」て思いましたもん!(イケメンに国境は無い!→は?)
さすがです。仕事にぬかりなし!て感じですね。
めちゃくちゃやり手のパワフルな女性ですよね!
まだまだ男尊女卑の価値観の根強く残るベトナムですが、
どこの国でも結局は女が強いってことがわかります。
このゴ・タイン・バン女史、映画も立て続けにヒットを飛ばし、
アメリカで公開されたうえに現在Netflixで配信されている作品もあるという、
もうベトナム国内では向かうところ敵なし状態。
今回の2作品もすごくよかったし、
今後も目の離せない存在になりそうです。
映画好きの皆さんは要チェックですよ~!

ちなみに明日から南部興行さんでは「ヨーロッパ映画特集」!!
大変!!
観たいのたくさん(゚Д゚)ノ!!
中劇のベトナム映画とともに、ヨーロッパの風も感じてみては?
えっと~私の口からこんなこと言うと怒られるかもしれませんが、
中劇のベトナム映画と南部さんのヨーロッパ映画は、
たぶんですけど、たぶんなんですけど、
「ほっといてもソーシャル・ディスタンス」
・・・・・ごめんね、南部興行のTさん。
言っちゃった。
だって、観てほしいんだもん!
こんな素敵な企画やってるっていうのに、
コロナが怖くて行けないとか言われると悲しいよ!
だって空いてるのに・・・・!!!(コラコラ)
ガラガラの劇場で、マスクして、消毒して、一人で静かに映画観て帰るくらいいいじゃないですか!
そのくらいさせてよ!!!(結局、自分の希望)
というわけで、みなさんもお見逃しなく~!
南部興行公式サイトhttp://nanbukogyo.jp/morioka/


最近、よくいろんな方から「ブログもツイッターも面白い!」なんてお褒めいただくことが多くて、嬉しい限り。
ほんとにありがとうございます!
そして「ブログもツイッターも同じ人がやってるんでしょ?」
とも言われるんですが。
・・・・え、似てますか( ゚Д゚)!?
いや、私はいいんですけどね。。。
実は、ブログはこの〝映画館通りのお局”状態の私が、
好き放題やらせていただいてるわけなんですが、
ツイッターのほうは私よりもだいぶ年下のNさんがやってるんですよね~。
私、昭和のオバチャンなんでSNSはマジで苦手なんですよね~。
もうねえ、無理!怖い怖い怖い!!
ツイッターって、
「ちょっと何かつぶやくと怖い人から攻撃されて炎上するやつでしょ?」
「え、リプって何?RTってどれ?フォロバって何語?」
の民族です、私は( `ー´)ノ
ただ、Nさん、歳は若いけど中身は私と変わらない、ただの映画オタク(失礼)なんで、
似てると言われても仕方ないかもしれませんねえ!
私よりもいろいろ知ってますからね。
私は、もう昔ほどたくさんの映画は観れていないので最近の映画についてはまったくついていけないような状態なんですが、
Nさんはすごい観てる!!
「え、映画館に住んでるの!?てか、いつ寝てんの!?」
ってくらい観てますよ。
休みの日も普通に映画館通りで会いますからね!
あと、好みも少し違うかな。
私は昔から日本映画、大好きなんですが、
Nさんは外国映画のほうが好きみたいですね。ゴジラ以外。
彼女にとっては「ノー・ゴジラ、ノー・ライフ」のようですよ。
ゴジラについては彼女はマニアの域なので、
何回観たかの話になると、
「好きな映画リピーター」の私ですら引くっていうね。
そのへんの傾向にじゃっかんの差があると思うので、
ブログツイッターではそのあたりに違いがあると思います。
〝やたらと昔の話が多い(得意)な私”のブログと、
〝今、スッゲー映画観てるNさん”のツイッター。
ま、結局はどちらも『ただの映画オタク』がやってるんですけどね、
というわけで、両方どうぞご贔屓にお願いします!!


★中劇公式サイト PC→http://www.chugeki.jp/