2020年10月2日金曜日

必見「ミッドナイトスワン」

こんにちは。
10月です。
早いですねえ!!
朝晩はびっくりするくらい涼しくなり、
外を歩く人はもうショートブーツを履いて厚手のコートを着ていたりして。
めんどくさがりの私はまだまだ衣替えなどには手をつけず、
どうにかして今出ているものでこの涼しさをしのごうと四苦八苦。
え、さっさと秋物出せって?
いや、だから不思議なんですよねえ!
毎年毎年、「あれ?私、秋物って持ってないのか!?」
って思っちゃうんですよね。
なんか・・・・・無いんですよ。
洋服なんかたくさんあるはずなのに、
まさに今、着るような秋物って、なぜか無い。
と思って買ったはずが、
また翌年になると・・・・・・
「秋物が無い・・・!」ってなる。
がっつり冬物はあるんですけどね。
ほんと不思議です。
なので、しばらくは夏の冷房対策にも使ってたミリタリージャケットでどうにかするしかない。
道端で、少し寒そうな私とすれ違ったら「あ、これね!」とほくそ笑んでもいいですよ。


さてさて先週末から公開になりました。
「ミッドナイトスワン」
(C) 2020 Midnight Swan Film Partners
草彅剛主演作。
ちょうど去年の同じ時期に中劇で上映していたのも草彅くん主演の「台風家族」
ひとクセもふたクセもある家族の遺産をめぐるドタバタを描いた作品で、
草彅くんはどうにかして遺産をたくさん手に入れようとするダメ男をナチュラルに演じて
、コメディとシリアス両方に一瞬で振り切れるバランスの良さが絶妙で、
演技がうまいのは前からいわれていたことではあるのですが
(ドラマ「僕の生きる道」などの〝僕シリーズ”で証明されていましたよね!)、
これはほんとに演技の幅を広げたなあと思ったものでした。
そして今回演じるのは、男性として生まれてきたけれど心は女性というトランスジェンダーの凪沙。
(C) 2020 Midnight Swan Film Partners
故郷を離れ、新宿のニューハーフショークラブのステージに立つトランスジェンダーの凪沙と、
その親戚で育児放棄にあっていた少女・一果。
常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。
傷ついてばかりの人生だった二人が、
反発しあいすれ違いながらも、
そうするしかなくて寄り添って過ごしていくうち、
少しずつ何かが変わっていくー。
オープニングはユーモラスで、コミカル。
その街の人たちは、なんだって笑い飛ばして軽やかにやり過ごしている、ように見える。
それでも一人になったとき、
孤独や虚しさやしんどさが浮き彫りになって自分自身にのしかかってくる。
スクリーンに現れた瞬間の草彅くんは、まさに男性の体つきをした「女装姿の草彅くん」なんですが、
しばらくするともうそこには「主人公・凪沙」がいました。
都会の片隅で、一人孤独を抱えて浮かない顔をしたトランスジェンダーが、
プライドだけを心の支えに、
カツカツとヒールの音を響かせながら歩いている。
それが彼女のそれまでの過去や苦悩やすべてを物語るのです。
いちいち説明はしないし、
その姿を丁寧に追うというわけでもない。
なんならちょっとぶっきらぼうに、
日常のなかで何かが起こったときだけカメラを向けるような突き放した感じ。
それがかえって心に刺さる。
それぞれ孤独に必死に生きてきた、理解しあえるはずもない二人。
強くつっぱねるしかやり方を知らない凪沙と、
きつく当たられるのに慣れてしまっている一果の、
どうにも噛み合いそうにないやり取りがもどかしいけど、
お互いハードに傷ついてきた者同士だからか、
いつしか徐々にわかりあうようになっていく過程があたたかい。
二人の心の距離をぐっと近づけることになる大きなポイントとなるのがバレエ
この映画では全体的にバレエのシーンが重要で、
しかも印象的に差し込まれているのですが、
これはそもそも監督が本気でバレエをテーマにした映画を撮りたいということから始まったものだからなのです。
だからもちろん、オーディションで選ばれた一果役の服部樹咲ちゃんはバレエコンクールで入賞したこともあるガチの経験者だし、
友人や先生の役までバレエシーンに登場する方は徹底的にバレエ経験者を条件に選ばれているのです。
どうりで、違和感なく美しいバレエシーンばかりでした。
映画やドラマなどではどうしてもバレエのシーンだけ吹き替えになったりするものですが、
この作品ではそこをとにかく経験者にこだわって作っているため、
自然で美しいバレエシーンになっているのですね!
特に一果を演じた服部樹咲ちゃんのバレエシーンは神々しいまでに綺麗で、
バレエシーンの圧倒的な強さと美しさと、
地元での空虚な友人たちや母親とのシーンなどの重くて暗い影のある表情との対比がすごく強烈に心に迫ります。
(C) 2020 Midnight Swan Film Partners
彼女はこの作品のオーディションで選ばれた新人ですが、
その無垢な輝きと凛としたたたずまい、
それと表裏一体にある重く背負った暗い影に、
とてつもない可能性を感じました。
生まれて初めての演技だからこそのナチュラルさもありつつ、
複雑な表情や演技を必要とする難しい役を完全に自分のものにして、
まさに〝一果”としてそこに存在する強い少女の魅力を放っています。
そんな彼女が輝くように踊るバレエのシーンと、
生きにくい人たちや陽の当らない場所に生きる人たちの、
陰と陽が入り交じる都会の片隅の風景は、
普段私たちが気付かないところで常に存在しいつの間にか消えている当たり前の景色だったりするのだろうなと思いながらスクリーンに見入っていました。
色の使い方や、後ろで静かに時折激しく流れるピアノの旋律も、
そんな決して派手ではないけどヘビーなお話に寄り添って、
儚く美しいシーンを静かに彩っていました。
映画は、印象的なシーンがあるかないかで全然変わってきますよね。
前回、「窮鼠はチーズの夢を見る」について書いたときも語ったんですが、
その映画を語るときにどうしても外せないシーンとか、
ポーンと心に残っているシーンがあると、
たとえばストーリーを多少忘れてしまっていてもやっぱり一瞬でその映画のなかに戻れたりします。
この「ミッドナイトスワン」では、
バレエのレッスンとかコンクールのステージとか海とかたくさんあるんですけど、
やっぱり私は二人が遊びでバレエをするシーンですね。
ここが一番、優しくてあたたかくて素敵なシーンだと思います。
「ミッドナイト」「スワン」なこのシーンは、
たぶんずっと心に残る何度も観たい名シーン(私は、ですよ?)になると思います。
このところ、草彅くん慎吾ちゃん吾郎ちゃんも、
立て続けに日本映画界を引っ張るすごい監督たちの作品に出演して、
俳優としてもかなり評価が上がっていますが、
今回のこの「ミッドナイトスワン」での草彅くんのお芝居を見て、
慎吾ちゃん「もうオレ、役者やれない、やめようと思った」
と語っていました。
吾郎ちゃん「何十年も一緒にいて、今まで見たことない草彅剛だったから驚いた」と話していました。
水川あさみさんのビッチぶり(びっくりするくらいに田舎の元ヤンが似合ってます)や、
田口トモロヲさんのナチュラルなオネエぶりも一見の価値有り。
そうそう、なにより思わず「うわぁ・・・・!」と声に出してしまいそうになったのが、
サトエリ(佐藤江梨子)!!
私、ぶっちゃけ苦手なんですよ。彼女。
これ、ディスってるんじゃないですよ。
なんでこんなに苦手なのかなあと思ったら、わかりました。
この人、「上手い」んです。
とにかく、〝嫌なヤツ”の役が!
映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』での〝嫌なヤツ”が最高潮。
私の中の〝嫌なヤツ”イメージは、多分あそこから来てるんだと思います。
ゾッとするほど嫌なヤツでしたからね!
・・・・うまいってことなんだろうなあ。。。
たぶん、上手いし、頭も良くて、そのうえ「強い」んだと思う。それもかなり。
たぶんだらけなので完全に私個人の見解なので気になった方はスルーしてくださいね。
たぶん彼女、自分がどうすれば嫌われるかわかってて、
最大限に嫌われるようにふるまうことが出来るんだと思う。
そこが強い。
客観的に、どうすることが自分に合うのか見えてるし、
そうしていく覚悟があるんだと思う。
ブランドもののバッグを持って、人を見下してるという、
もう絵に描いたような成金の自己中マダムを、
ほんとにナチュラルに演じてます。
これはさすがでした。ここ、注目してみてくださいね。
そしてこの映画、
たくさんの映画関係者や監督、役者さんたちからも絶賛コメントが後を絶たないそうで、
いま中劇で上映中の「窮鼠はチーズの夢を見る」行定勲監督も、
この作品の内田英治監督と親しいようで感想を寄せています。
正直、「何度も観たい!!」っていう作品ではありません。
心がしんどくて。
でも、一回でちゃんと受け止められる作品です。
何度も観ないとわからないとか、
あちこち伏線があって・・・とかの小細工は一切なくて、
シンプルで、冷静で、しんどくて、
ときどきクスッと笑えるけど、
そのへんに転がっているはずのリアルが胸をえぐられるように苦しくて、
それでも手触りはずっとほんのりあたたかい、
そんな映画です。
号泣。
私は途中で何度もカバンからティッシュを探してゴソゴソしてしまいましたので、
みなさん、これから観るならハンカチかティッシュ必携ですよ。


さてさて、このところ映画の公開後にブログを書いてしまっていますが、
そのへんは長ーい目であたたかく見守っていただけると助かります。
なにしろ、このブログは『ほぼ趣味』ですからね(;'∀')
月末は特に、本業がいろいろ詰まっていて、なかなか『趣味』には向かえないのです。
だいたい夜中に家でブログ書くんですけどね、
月末なんかは家でくたばっちゃってパソコンも開けない。
「お酒」「推し事」で忙しいわけではないですよ?
いや、それもちょっとあるけど(*_*)
私ね、こう見えてもちゃんと映画館のお仕事してるんですよ!
知ってましたか!?
ふだんは事務所で事務仕事して、
休憩時間近くになるとフロアに下りて売店やレジなど手伝って、
毎日、外にお使いに出たりチラシや時間表を補充に行ったり、
月末はパンフやグッズなどの月末〆やら翌月の宣伝作業。
ね、ちゃんとやってるんですよ。
それに、前回もお話ししたんですが、
私、映画については嘘がつけなくて。
やっぱりちゃんと観てから書きたいっていうのがあって。
「観てもいないのに適当におすすめするなんて映画に対する冒とく行為だっ!」
と思っています。
なのでどうしても、楽しみにしてる作品ほど、
「観てから」書きたい。
プロじゃないですねえ・・・(;'∀')
でも、いいんです。
私には映画しかないので。。。
・・・・・って、とりあえず長めの言い訳したところで、
そろそろ〆ますか。
次回は、この秋続々と決まってきた新作のご紹介もできるといいなと思っております。
豊作ですよ~!
いま、「窮鼠は~」「ミッドナイトスワン」で絶好調な中劇でした( *´艸`)
ま、コロナで席をソーシャルディスタンスしてなきゃあ全然余裕でお客さん入るんですけどね(^_^;)
前後左右を空席にすると、半分しかお客さん入れなくて、
すぐに満席になっちゃうんですよ。。。
なので、ネット予約とかうまく使って、いろんな映画観ちゃってくださいねー!
真冬まで、まだまだ走るよ~!!!


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