秋深し。
というわけで、アートな映画で芸術の秋♪
秋?
いや、もう冬ですけどね(*_*;)
とにかく中劇でも知的好奇心やサブカル的好奇心をくすぐる作品が続くこの時期、
一応、作品のご紹介をしておかないとね♪
フロアももうすぐ「妖怪ウォッチ」一色になっちゃうので( ;∀;)
中劇自慢のエレベーターのラッピングはもうすでに妖怪、妖怪?妖怪!だらけ。
いまのうちに大人の映画の話をしておきましょう☆
明日公開は二本。
「ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪」
(C) Roloff Beny / Courtesy of National Archives of Canada
(C) “Courtesy of the Peggy Gugggenheim Collection Archives, Venice".
グッゲンハイムといったら、アメリカの鉱山王ソロモン・R・グッゲンハイムが収集した近現代美術アート作品を収蔵した、ニューヨークにあるグッゲンハイム美術館が有名ですね。そしてその姪にあたるペギー・グッゲンハイムがたった一人で集めた近現代アートコレクションを収蔵した、個人のものとしては質・量ともに世界最大級の美術館がイタリア・ヴェネツイアにある『ペギー・グッゲンハイム・コレクション』。
(C) Roloff Beny / Courtesy of National Archives of Canada
(C) “Courtesy of the Peggy Gugggenheim Collection Archives, Venice".
生前はかなり仲が悪かった叔父と姪でしたが、自身の死後、膨大な数の美術品と、それを収蔵する建物の管理を任せるのにはやはり叔父の力を頼るしかなかったのでしょう。
ペギーの死後は叔父ソロモン・R・グッゲンハイム財団に寄贈され、
同財団が管理にあたっているようです。
この映画は、そのペギー・グッゲンハイムという一人の女性の、
華麗な恋愛遍歴とともに、大胆で数奇で痛快な人生を紐解くドキュメンタリー。
映画全体が近現代アートの数々で彩られ、
豪華すぎるアーティストたちが次々と登場するこの作品。
近現代アートに興味のある方はもちろん画面を眺めているだけで楽しいのですが、
近現代アートや有名アーティストにあまり関心が無い、よくわからないという方にもおすすめ。
怒涛の20世紀を生きたペギー・グッゲンハイムという女性の波乱の人生そのものがハンパなく面白いのです。
(C) Roloff Beny / Courtesy of National Archives of Canada
(C) “Courtesy of the Peggy Gugggenheim Collection Archives, Venice".
NYの富裕な家系に生まれたペギーは、伝統と格式だらけの上流階級の暮らしから逃れるため、23歳でパリへ。
第一次世界大戦後の開放的な雰囲気の中、
世間ではまだまだ認められていなかったシュルレアリスムや抽象絵画のような革命的な表現に出会い、
当時、芸術の中心だったパリで世界中から集まっていたたくさんのアーティストたちと交流を深めていったのです。
でもこの映画に出てくる数々の美術品や、彼女と関係を持ったたくさんのアーティストたちは、
なんなら背景、あるいは豪華すぎるアクセサリー。
子供のころから周囲に反発し、我が道を行く超個性的な彼女の歩んだ人生は、
穴ぼこだらけの獣道を一人で裸足で歩いたようなもの。
その自由奔放さや大胆さには、画面を見ているだけでも圧倒させられます。
心のままに人生を切り開き、恋愛を重ねつつ、
時代の波に翻弄されながらも、
桁外れの決断力と行動力でその波をうまく引き寄せ、
男性社会だったアート界で独自の道を切り拓き、
今では「20世紀美術の母」とまで言われる存在に。
もちろんそれには、生まれながらの家柄や経済力があったからに違いないのですが、
お金だけではアートの世界を生き抜くことはできません。
いま何が一番新しいのか、いまクールでかっこいいのはなんなのか?
そんな最先端の感性や鋭い勘が彼女の人生を変えたのでしょう。
そしてまさに20世紀の前衛美術が生まれる瞬間にその場に立ち会ったといえるほどの
運や出会い、そしてそこから繋がるアート界での人間関係と、
そこから吸収した知識や大胆な決断力で、
たくさんのアーティストたちを支援し、
20世紀を代表する貴重な作品たちを集めて守り、
今に伝えることとなった伝説のパトロネスの、
奇跡のようでありながら骨太で確固たる意思が伝わってくるようなコレクションは、
自由でたくましい彼女の人生そのもの。
この作品は、ペギーの生前に収録されたインタビューに基づき、
その華麗で数奇な人生を追ったドキュメンタリー。
(C) Roloff Beny / Courtesy of National Archives of Canada
(C) “Courtesy of the Peggy Gugggenheim Collection Archives, Venice".
この作品では、激動の時代の中で、たくさんのアーティストを亡命させたり膨大な数になっていたコレクションを戦火から守るために奔走した武勇伝や、
自身の華麗なる恋愛遍歴ももちろん包み隠さず語っていますが、
それとともに、愛する人たちを次々と亡くしている壮絶な悲しみと痛みも伝えています。
あのタイタニック号の沈没で大好きな父親を亡くしたことに始まり、
姉や甥っ子、既婚者同士で駆け落ちまでした恋人、そして娘と、
たくさんの死と向き合いながらの人生だったことも語られます。
もう、常に画面に目が釘付けになってしまうほどの贅沢なアート作品と、
本気でビックリしてしまうようなエピソードの数々に、
あっけにとられたままあっという間に過ぎた1時間半。
私が生まれたころはまだ生きていた、この強くて豪胆な一人の女性の人生は、
驚きとともに胸のすくような爽快さを感じます。
コクトー、ピカソ、ダリ、ミロ、ポロックなどの芸術家だけでなく、
アーティストだった両親の作品がヴェネツィアのペギー・グッゲンハイム・コレクションに展示されているという(!)ロバート・デ・ニーロまで、
豪華すぎる登場人物にもビックリです。
アートに興味のない方も絶対に楽しめる実話。
ゆっくり一人で、あるいは女性同士で観てほしい作品です。
公式サイト→http://peggy.love/
もう一本は、お問い合わせも多かったこちら。
「ムタフカズ」
(C) ANKAMA ANIMATIONS - 2017
アニメ映画「鉄コン筋クリート」で世界中の映画祭を騒がせたSTUDIO4℃と、フランスのコミック作家ギヨーム“RUN”ルナールが海を越えてコラボ。
『ムタフカズ』とは、ヒスパニック系のスラングで「マザーファッカー」を意味するという設定の造語。
主人公のキャラクターはいかにもアニメといった感じの、三頭身でコミカルな三人組の若者ですが、
内容はなかなかハードでスリリング。
オープニングからハラハラドキドキしっぱなしのバイオレンスアクションなんです。
失業者が路上に溢れ、カラーギャングが抗争を繰り返すL.A.のダウンタウンを舞台に、
未来にも明日にすら希望を見出せず、その日暮らしの若者3人組の、
どんづまりの青春。。。。
って、なんか最近あったよね?
そう。少し前にご紹介しましたが、まだまだ上映中の『ギャングース』。
(C) 2018「ギャングース」FILM PARTNERS (C) 肥谷圭介・鈴木大介/講談社
これと設定が似てました!どこの国でも、どんな時代でも必ずある格差や社会の闇や行き場の無い若者たち。
普遍的なテーマなんですね!
いい機会なので、日本の闇とアメリカの闇、
同じように行き場の無い若者3人組の映画で比較してみるのも面白いかも('∀')/
「ギャングース」も激しい暴力描写でR-15指定が付いていましたが、
この「ムタフカズ」は、少しマイルドなPG-12。
それでも、ハードな暴力描写とリアルな銃撃戦はほんとにドキッとするほどの迫力。
監督も、街の様子や銃撃戦にはかなり気を配ったようで、
ガンアクションは楽しさより怖さを、
無限に撃てる魔法の銃ではなくて本物のリアリティを出したかったと語っています。
そして、治安の悪いダウンタウンのリアルな街並みだけでなく、
このキュートでいかにもマンガのキャラクターといった感じの主人公たちのバックグラウンドに見え隠れする、”人種のるつぼ”“銃社会アメリカ”のリアリティにも深さを感じます。
自分たちがマイノリティであり格差社会の底辺にいること、
周囲とちょっと見た目が違うだけで差別される理不尽さ、
そういったものを、無気力なのかクールなのか、
諦めたような口調でとつとつと語る主人公の声はなんと草彅剛。(↓真っ黒の丸顔)
ぶつぶつと文句ばかり言っているけどやっぱり友達が大事なガイコツくんは実写でもそのままいけそうな柄本時生。
バカで自己中、トラブルメーカーのウィリーもなんとなく顔が似ているような気がしてくる満島真之介。なんとエンディングテーマも歌っていますよ♪
(C) ANKAMA ANIMATIONS - 2017
個性的なキャラクターと過激なアクション、そして緻密でリアルなビジュアル。
最初から最後まで、「アニメ」を観ている感じのしない映画です。
汚くてゴミだらけの部屋や、頭を撃ち抜かれた人間の生々しい死体ですらクールなアート作品のように見えてくる不思議。
「鉄コン筋クリート」もでしたが、
最初はストーリー、二回目はビジュアル、三回目は細かい部分・・・と、
全体を繰り返し見直したくなる奥深さ。
「アニメ」としてではなく、「ダークな青春」や「クライムアクション」のジャンルのつもりで観てほしいハイクオリティな作品です。
公式サイト→http://mutafukaz.jp/
そして今年もやります!
「ラヂオもりおか音楽映画祭」
(http://radiomorioka.co.jp/music-cinema-fes/)
中劇の参加作品はこちらの2本。
『KUBO クボ 二本の弦の秘密』〈日本語吹き替え版〉
(12月8日のみの上映)
(C) 2016 TWO STRINGS, LLC. All Rights Reserved.
昨年の今頃公開され、世界中で絶賛されたストップモーションアニメ。海外で作られる「日本が舞台」の作品にありがちの“残念な間違い”がほとんど無い「ちゃんとした日本ぽさ」を、緻密なストーリーと息をのむほど美しい映像で描き出したクオリティの高さが素晴らしい作品。
スクリーンで見逃した方はぜひこの機会に大きなスクリーンで体験してほしい映像です。
*こちらは上映後に主役の声優を務めた矢島晶子さんのトークショーがあります。
座席指定券を販売しておりますので、ご希望の方は劇場窓口まで!
音楽映画祭のチケットでも鑑賞OKですが、座席指定が必要なのですでにチケットをお持ちの方も一度劇場窓口に来ていただき座席指定券と引き換えてくださいね!
→http://www.chugeki.jp/comingsoon/index.html#56
『アンクル・ドリュー』(12月7日~13日上映)
Motion Picture Artwork (C) 2018 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
こちらは、NBAのスター選手カイリー・アービングが特殊メイクで老人にふんし、若者相手に超絶テクニックを見せて世界中で話題になったペプシのCMを映画化したもの。まずは予告をご覧あれ(*´▽`*)/
(公式サイト→http://uncledrew.jp/)
冴えないバスケコーチが老人チームを結成し、ニューヨーク最大のバスケ大会に挑むという王道のスポ根コメディなんですが、
何がすごいって、出てるメンツがNBAのガチのスター軍団だってこと!
しかも、畑違いでやらされてる感満載の大根芝居ではなくて、
なぜかみんなナチュラルでユーモア溢れる芸達者揃い!
特殊メイクで老人に扮したスター選手たちの華麗なプレーはもちろんのこと、
家族みんなで楽しめるハッピーでポジティブなストーリー、
観た後は気分爽快、明日からまたがんばろうと思える素敵な映画です♪
と、かなり長くなってしまいましたがこの晩秋、
いろいろ観たくなっちゃったでしょう(*‘∀‘)!?
そろそろバタバタとせわしない時期もやってきますからね、
今のうちにゆっくりと大人の映画を楽しんでおきましょう♪